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『BIG FISH』 映画館でマジ泣きした映画。 試写会で観たんですけど、あの時はつくづくひとりでよかった……。 いまさら説明するまでもないヒット作ですが、 自分の人生をおとぎ話のように語る父親と、 そんな父親に反発する息子のお話。 死期が近づいたお父さん(リアル)と、 お父さんが語るお話(イマジネーション)が同時に進行していきます。 妄想王のティム・バートンが“リアル”を描くなんて ある意味禁じ手だと思うけど、 彼も実際にお父さんを亡くして、子供ができたそうですね。 だから妄想を卒業したというより、ただの異色作なんだと思います。 ちなみに彼の(内縁の?)奥さんは魔女役のヘレナ・ボナム=カーター。 でも、ほんとうに美しい映画です。 語り口のウマさに騙されて泣いてることも含めて、素直に感動しました。 ほーんとティム・バートンってくえない嘘つき! でも私、エンターテイメントなんてぜんぶ嘘だと思うんですよ。 ぜんぶ嘘だし、ただ現実のオマケでしかない。 でもラッキーなことに、私はそういう付加価値を味わえるような 余裕のある世界に生まれたんですよね。 で、音楽や映画を好きになった。 ときどき、もし私がエンターテイメントに出会わなければ、 どうなっちゃってたんだろうと想像します。 というのも、私は一人っ子で、なんでも自分中心だから、 ときどき当たり前に受け取っているラッキーを確かめていないと、 すぐにいろんな大事なことを忘れていくんですよね。 なんとなく平和な毎日を送っていることも、 何人かの人に愛されてることも、 好きなことをして暮らしていることも、ぜんぶ忘れちゃう。 いつか何か大事なものをなくしたりすれば気づくんだろうけど、それじゃ遅い。 だけどお説教されるのも、懐かしい話をするのも、“いい話”をされるのも 身の毛がよだつほど嫌いだから、 あんたはけっこうラッキーなんだよ、ということを確かめるために ときどきこうしてキレイな嘘をまぜたおとぎ話を聞くのです。 そして自分の生活を、ちょっと違う視点で観てみる。 そういうイマジネーションを美しいものだとか、 すべての人に必要なものだとは思わないけど、 少なくとも私にとっては生きていく上で必須のものだと思います。 エンターテイメントはぜんぶただの嘘だと思うし、 同時に、この世のすべてだと思う。 音楽や映画はこの世界からいちばん最初に削っていいものだと思うし、 同時に、もしなくなったら生きていけないものだと思う。 だからこの映画に出てくる 作り話ばっかりして息子に嫌われてる調子のいい父ちゃんは、 まさに私の思うエンターテイメントそのものでした。 そんで、死に際に、息子とともに真っ赤な車で 田舎道をブッ飛ばしていく彼の生き様を観て、 「私も自分の人生を愛せるかも」って思いました。
by reiko.tsuzura
| 2004-10-29 22:34
| 映画
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