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年明け1月に限定ロードショーされる矢野顕子さんのドキュメンタリー映画『SUPER FOLK SONG~ピアノが愛した女。~』(2017デジタル・リマスター版)の試写に行かせてもらいました。24年ぶりの劇場公開だそうです。 この映画、DVDは持ってたけど細かいところは忘れてたし、なにより大スクリーン&いい音響で観るとまったく印象の違う作品だと痛感しました。 レコーディング現場で撮影が始まるときの張りつめた空気、観てるこっちの胃が痛くなりそうな緊張感は記憶の通りだったけど、余計な情報が遮断される劇場では、もう逃げ場がないって感じ。 そして矢野さんが極限の集中力で何度も何度もテイクを重ねる姿を観ているうちに、これはちょっと不思議な体験だったんですが、こっちの耳も少しずつ研ぎ澄まされていくような感覚になってくるんですよね。矢野さんがピアノの調律をお願いするシーンがあるんですが、その微妙な音程の違いすら聴き取れるんじゃないかと思えてくる。 そうすると途中で挟み込まれる、なにげない町のシーンの風の音とか、インタビューシーンの後ろで鳴ってるサイレンとか、いろんな音がくっきりと聴こえてくるようになる。今まで聞いていたのに聞こえてなかったものが、いきなり耳に流れこんでくるみたいで、なにコレすごいって思いました。 構成もみごとで、レコーディング中の成功や失敗の瞬間だけじゃなく、出前のうどんを待ちわびるシーンとかすごくよかった。あれがないとホントに息苦しいものになると思います。79分の映画のために92時間分のフイルムをまわしたそうですから、そこでうどんが残るってすごいこと。矢野さんの調律師さんへの丁寧な態度とか、そういう端々に映るものが魅力的なんですよね。 「中央線」のレコーディング中、間奏のピアノを聴いていたら、自分の記憶にある駅とか商店街の風景(私の場合、小学生まで住んでた武蔵小金井の町並み)がドワーッと浮かんできて、思わず目をつぶりました。歌詞の内容とか目に映るものより、音から浮かんできた自分のイメージを優先したくなった瞬間でした。それは映画から意識が離れたというより、映画の伝えるものが思いっきり入ってきたということだと思います。 それにしても改めてこの映画を観ると、なんでこんなにめんどくさいことに挑むんだろうって思います。完璧な演奏を完全な一発録りでと考える矢野さんも。そのプロセスを映像に収めようとした坂西監督も。アナログテープと16ミリフイルムの時代に。その手間やプレッシャーを考えると、ありえないわーーって叫びたくなる。けど、そのめんどくささを全部やりきってしまったものが、時を超えるんだなと納得する自分もいました。 あと、矢野さんが何回も何回も録り直してた「それだけでうれしい」のリズム、あれは一体なに? 冒頭のピアノフレーズ、拍は取れるけど構造がまったくわからない。あれはジャズのフィーリングなの? ラテンのノリなの? 譜面的にはどうなるの? もう一回観て確かめたいです…! 映画公式サイト
by reiko.tsuzura
| 2016-11-17 17:16
| 映画
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