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『コバルト風雲録』久美沙織 読みました『コバルト風雲録』。 ライトノベル云々の話題はざっくりカットされて、 作家・久美沙織の半生がざっくばらんに綴られてます。 たとえば、コバルトの原稿料は当時、原稿用紙1枚3千円だったとか。 (しかしハヤカワの『SFマガジン』は1枚千円くらいだったらしい。ひー!) 2千人のファンのデータをノートにまとめ、 サイン会の前にアタマに叩き込んでたとか(80sプラダを着た悪魔!)。 ゲームのノベライズは、全3巻にまとめなきゃいけないから、 最後はカナを漢字にして文字数をかせいだ、とか。 シリーズものを書いてる途中で絶版が決まったやるせなさとか。 でもやっぱり、どんなぶっちゃけ裏話より、 作家としてこれからの展望を語る最終章「永遠の二年生」がとてもステキです。 これを読むと、久美さんがいかに小説に惚れてて、 「物語至上主義」の作家さんか、よくわかります。 (大体の内容はここで読めますが、風雲録のほうが文章が簡潔で美しい) 物語は作るんじゃなく、降りてくるのをただ待つのみ。 だからわたしは神さま任せの作家、と言い切った後で、 いかなる作者も、作品に奉仕するために生まれてきたものにすぎない、とわたしは思うわけで(後略) と綴る久美さんは、かーなーり、いかした女っぷりです。 コバルトのスター作家だった久美さんは、 「コバルト」VS「ティーンズハート」抗争の前に、 少女読者とのズレを感じ、コバルトを去ってしまいます。 きっかけとなったのが、「おかみき『罵倒の嵐』事件」。 顛末はここに。 作者の人気が上がり、物語のキャラが立つほどに、 少女読者たちは作者の意図なんて踏みにじり、盛り上がる。 そうですよ、乙女ほどビジネス相手としてやっかいなものはない。 2次元と現実が溶け合う脳の持ち主で、死ぬほど独占欲が強くて、 世界でもハイレベルな妄想力を誇り、若さゆえの行動力もある! しかも団体行動を好み、団結するごとに力を倍増させる。 さらに、そのパワー、その猪突猛進ぶりが、 今だけ許される「期間限定」だってこともちゃんとわかってる。 未熟で、抑えが効かなくて、抜け目がなくて、 歪んだ愛情を容赦なく作り手にぶつけられる。 それが夢見る乙女パワー。 そのコワさ、わかりたくなくても、生理的にわかる。 だって私も乙女だ(った)もーん。 今となればその闇雲なパワーも大事と思うし、 たぶん自分の中には死ぬまで潜んでるものと思うけど、 正面きって付き合うと、消耗するのはよくわかる。 そして疲れ果てた久美さんはコバルトから離れていってしまうのですが、 その直前に(半ばキレ気味に?)書いていたのが、 『鏡の中のれもん』という作品だそうです。 ……『鏡の中のれもん』! これぞ私が今、もっとも読みたい少女小説! なぜなら…… (長いので続く)
by reiko.tsuzura
| 2007-05-20 17:34
| 本
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