|
先日、長嶋有の小説がおもしろいのか、そうでもないのか、 いまだに判断つかないって書きました。 ですが最近、映画『ジャージの二人』を観て、 「あれっ、これ案外いい話じゃない」と思いまして。 てことは、話はおもしろいけど文体が合わないってこと? いやいや、この人は文体がすべてでしょう、と思ったり。 そんなときに『夕子ちゃんの近道』を読んで、「あっ」と思いました。 長嶋有『夕子ちゃんの近道』 『夕子ちゃんの近道』は、アンティーク・ショップ、フラココ屋に集う 人々のアレコレを描いた短編集です。 登場人物は何かから逃れるようにフラココ屋にやってきた男と、 風変わりな店長と、ワケアリっぽい独り身の女性と、 相撲好きのフランス女性と、先生と恋愛して妊娠しちゃう女子高生と ……と書くと、なかなかにドラマチックですが、 文章が淡々としてるから、ぜんぜんドラマが起きたように感じられない。 そのノリがツボな人には、たまんない小説と思いますが、 私はやっぱり読み進むのに一苦労で、うっすら苦痛とすら思う。 なんでかなー、キライじゃないはずなのになー、 と思いながら読み進めてたら、最後にやっと気づきました。 そうか、この人の文章、情報過多なんだ。 ストーリーに直接関係のない、 どうでもいいエピソードを描いてる一文に、情報が多すぎる。 (いや、どうでもいいエピソードがキモの作家なんですけどね) たとえば、年下の子に敬語を使われたときの主人公の気持ち。 年少の知り合いがいないから落ち着かないのだ。頼むからオレに敬語使わせろよといいたくなる。 あーそうそう、わかるわかる、それで私もさ……と思ったところで、 文章はもう次の展開に入ってて、このエピソードはブツ切れる。 ただの独り言みたいなもんだからブツ切れて当然なんですけど、 それにしても、いちいちエピソードが妙な共感を呼びすぎるというか。 私だけかもしれないですけど。 いちいち「あーそうそう」とか思わなきゃいけないから、疲れる。 せっかく共感してるのに、話がサクサク先に進んじゃって「なんだよ!」とも思うし。 ひとつひとつのエピソードはおもしろいんだから、 つまり、これは、おもしろ過多なんだなと思います。 だから小説全体を楽しもうと思っちゃダメだ、 こっちもブツ切れに読まなきゃと、やっと気づいた次第です。 オッケーこれで長嶋有、楽しめる! そう思うと、主人公がフランスに行ったときの心情とかね、 夜、カーテンにくるまるようにして窓にもたれ思いにふける自分の姿が、なんだかフランスに呑まれているような気がして、急いでベッドの上であぐらをかいた。 日常でドラマが起こると、「なんか私、ドラマしてるみたい」って、 こっ恥ずかしくなって思わず引いちゃうこの感じ、わかるわかるー! DVD『ジャージの二人』 こちらも「好きな人は好きな感じ」としか言いようのない映画ですが、 シナロケの鮎川さんがとてもかわいらしくてカッコいいっす。
by reiko.tsuzura
| 2009-02-22 23:59
| 本
|
ファン申請 |
||